鶏鳴/唯浮
 
反芻する嘴に傷をつけないでくれないか
誰が為に歌っているのでない
鷹になれ!この目!
兎になれ!この耳!
犬になれ!この鼻!
貫く空に顔向けが出来るように
蝙蝠が夜明けを見送って
遥か先の朝を感じ取るみたく
鋭く尖った嘴で
誰が為に歌えようか
傷だらけの蝋燭に揺らめく炎のため
声高に叫びたいのだ!
その叫びが歌となってくれたなら
ただ今此処に在ることを
素直に受け入れようではないか
感謝の念を抱こうではないか
反芻する嘴だけが知っている

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