夜警/MOJO
 
顔写真のまえで微妙に位置を変えながら、掴んだり開いたりを繰り返している。私は男の左斜め後ろで、座布団に座り、男のする一部始終を眺めている。男が聴きなれない外国語で何やら呟きはじめた。一瞬、ここへ来たことを悔やむ気持が生じたが、効果がなければ、体験そのものを捨ててしまうだけのことで、そう考えれば、大した間違えではないように思えてきた。
「あなたのマントラが決定しました、シュリム、です。さあ、眼を閉じて心のなかで唱えてください」
 私は、男のリードに従い、たったいま決定した私の聖句を唱えた。
 シュリム、発音し難いが、音声はないのだからべつに構わない。シュリム、シュリム、シュリム、シュリム…シュ
[次のページ]
戻る   Point(4)