夜警/MOJO
重い。心臓が脈打つごとに、こめかみで、首筋で、血液の循環を知覚できる。
シュリム、それが私に与えられた聖句だった。
カーテンを閉め、灯りを消した部屋で、椅子に座り、私はひたすらその一語を心中で唱えている。眼は閉じている、というよりも、瞼の裏側を見つめている、といったほうが正しいかもしれない。さっきまで右の瞼に貼り付いていた猿の異形は、私が決して眼を逸らさないことに嫌気がさしたのか、姿を消してしまった。次第に吸う息がみじかく、吐く息がながくなってくる。冬眠中の熊が見る夢のなかにでも入りこんだような、そんな悠々とした気分で、私は想念の海を浮遊している。
眠剤を服用するようになる、ずっと以前
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)