昔の駄文「他者の発見」/佐々宝砂
子供の世界ではなく、本の、活字の、物語の世界にあった。そしてその世界の「中心」にあるものは私ではなかった。どう考えてもそうではなかった。だから私は、恋愛を体験する前に「他者」を発見せずにいられなかった。
子供のときの話なので、なかなか思い出せない。順序だって理路整然と考えたことでないとは思う。しかしとにかくこの「他者の発見」が、私という人間の、また私の詩作の土台になっていることは確かだ。最近になるまで忘れていたくらい下にある土台だ。私はそこに立ってものを言わねばならない。
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恋愛についてちょっとだけ。恋愛以前に「他者」を発見していた私に恋愛がもたらしたものが何
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