昔の駄文「他者の発見」/佐々宝砂
 
1984年のことである。私は切実に核戦争がこわかった。世界は終末の一歩手前だと思っていた。私は死ぬ、みんな死ぬ、世界は終わる。切実にそう考えて、私はひとつの結論を得た。

「私は私のものではない」

私に思想らしきものが生まれたのはこのときである。この散文詩がいい散文詩だとは思わないけれど、この散文詩は私にとって大切なもの、迷ったとき立ち戻るひとつのポイントとなった。これが私の基本なのだ。私は私のものじゃない。私という人間は、私にとってさえも他者なのだ。当然のことながら、この結論に到る前に、私は「他者」というものを発見している。

いつからそうだったか思い出せないけれど、私にとって「他
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