−/ヤギ
しみやら申し訳なさやらが湧き上がり、それがぎゅうぎゅうと力なって目一杯押しました。そこで一つ足をかけられて僕は思い切り転びました。
「もう一番」
ばしん、激しくぶつかります。
僕は悔しかったのです。僕は自分との約束を破ってしまったのです。だからこんなに悔しいのです。悔しくて悔しくて涙が出てきました。その悔しさがまた力になりました。それは相手も同じでした。どうしたら良いのか分からないこの叫びたいような気持ちを力にしてお互いに相手にぶつけていたのです。今度は僕が勝ちました。
「もう一番」
ばしん、もう力は入らなくなってきていましたが、それでも取らずにいられません。ばしん、ばしん、ばしん、何番も取って二人ともすっかり力が入らなくなると、汗と涙とで汚くなった顔で僕たちはどちらからともなく笑っていました。
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