海/葉leaf
 
系のようななりたちをした人の中の人は、魚の中の魚と衝突をくりかえしては、官能の細胞を交換しあう。魚が海の咎をかじり続けるので、人は魚を狩り続けるのである。

街の上に掲げられた悼みのようなやわらかい空は、無数のやいばを街に降らせながら、とこしなえに遠ざかってゆく。人は街中に散乱した雨の刃を、拾い上げては大気に溶かし、光の輪として指先から射出する。光輪は蔓のような蒸気をかわしながら、ぬめってゆき、海の表皮を燃やしてしまう。海は金属質の喜びをとげのようにめぐらして、人を呑み込んでゆく。

海の中の海にはまたひとつ、人の中の人の焼け続ける標本がはりついて、標本は、瞑想の色をした魚をいくつも吐き出した。

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