ある旅立ち/MOJO
 

 翌年、ある冬の夕方に店を開けようとしたアケミが扉と枠の隙間に挟まった夕刊を引き抜くと、淡いグリーンの封書がひらひらと床に落ちた。封書には切手が貼られておらず、宛名もなかった。
 暖房のスイッチを入れ、酒屋に注文の電話をかけてから、アケミはその封書を開いた。封筒と同じ色の便箋には青いインクでこんなことが記されていた。

 前略
 アケミちゃん、ネリオです。もしかするとアケミちゃんはぼくのことを覚えていないかもしれません。そうであるならばこの手紙は意味をなしませんが、アケミちゃんがぼくを記憶していると仮定してつづけてみます。
 ジルとは案外簡単に再会できました。ある夜、自室のパソコンでネ
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