ハウス/石川和広
 




誰かわたしを飼ってください
朝 かろうじて
そう わたしの耳がささやいたとき
ひとが姿を現しはじめた

かつて わたしがどんぞこで
まだ 形をとりもどしていない頃だった
へやには キャベツ チーズ 卵が
腐ったままおかれていて とても美しかった

わたしはあせっていた
内臓が弱っているせいか
腹は下しやすくなっており
頭はあつく 手足が冷たかった
早く火にあたりたかった
空に火はまたたいていたが
何の慰めにもならなかった

ひとが姿を現すにしたがって
わたしの感受の森はいっそう深くなり
その深さを燃やしてやりたいと思いはじめる
残虐だが

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