花と源/木立 悟
 



雨のなかの長い影から
無数の別れの手が振られる
雨のなかの長い鏡が
雨を映して立ちつくし
幽霊のようにかがやいている


川を歩み 立ちどまり
水紋を見つめつづける光が
目をふせ 故郷を想うとき
山の頂にうっすらと浮かぶ
はじまりの道をあおぐとき


空を押しのけても空はあり
次の空から 次の空から
陽にも花にもはためきながら
空は現われ
重なりつづける


何かを盗むようなうしろめたさで
ひとつの花に触れるとき
すべての花がふるえだし
ふるえ ふるえ
触れては埋もれ
触れては埋もれ
ふるえに埋もれ
ふるえに昇り
そのままの姿で
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