白物家電/MOJO
 

 私は建物の裏手に回り、木片や金属片で山になっている辺りに白物家電を投げ捨てた。
 殺人事件の物的証拠はこうして秘密裏に処分されるのだ。
 気づけば西の空は茜色に染まっている。もうすぐ産廃のトラックがこのゴミの山を引き取りに来る。
 私は嬉しくてしかたがない。
 人生、捨てたものではない。
 しみじみとそう思ううちに涙が溢れてきた。
 こんなふうに泣くのは久しぶりのことだ。
 涙を流すのがこれほど気持ちの良いことだったとは。

 私はゴミの山を前にしていつまでも泣きつづけた。
戻る   Point(3)