小詩集「書置き」(八十一〜九十)/たもつ
 
夜の更ける頃
君の身体から
今までに聞いたことの無いような
音が聞こえてきた
安らかに君は君の中で
溺れているのかもしれなかった

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縄跳びの回数を
数え間違えて
少女はずっと
八回を跳び続けている
こっそりと開いた扉の向こうでは
誰かが春の欠伸をしている

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犬とはぐれて
首輪が転がっている
トビウオの胸ビレを集めすぎて
子供はもう失うことを覚えている
何故だろう
夕方になると
夕日の話ばかりしてしまうのは
音も無く今
指紋がうそをついた

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電話ボックスの中で
きみはどうして良いのかわからない
電話ボックスにいるのだか
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