十一月のオリオン/嘉野千尋
 

   微笑みながら


   何もなかったわけじゃない
   わたしたちの間にも
   まるで夜空の、
   星のない闇のような一瞬があって
   その向こうに小さく光るものに気付かずに
   涙を流した日があった


   あなたの指先は
   星と星の間を少し彷徨ってから
   最後にわたしの頬にふれる


   冷たい、と言うと
   あなたは微笑みながらまた
   星の名を繰り返した


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