十一月のオリオン/嘉野千尋
 
   
   冬の空に
   オリオンが南中する頃
   ベテルギウスは涙を零して
   名前が呼ばれるのを待っている


   冬の空の、暗い、
   まるで何も存在しないかのように見える
   闇を
   あなたは指差したまま
   星の話をわたしに教えてくれる


   アルデバラン、カペラ、リゲル
   それからシリウス
   一つずつ
   星の名前を並べながら
   

   あなたの眼差しは
   少し曇った天窓の向こうへ
   わたしはそっと
   あなたの横顔を見つめ続けた


   一緒になって
   冬の夜は寒いね、と

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