天沢(あまざわ)オリオン/けんご
天沢オリオンと言ふのはね 列車が街を出て
もうじき建物の少ない平原へと辿りつく前 夜の水族館のような
窓辺に映る青い電光掲示板に書いてございましたよ 奇妙なことをおっしゃる
天沢オリオンは夜空の星 サソリもしっぽの毒を赤々と燃やし続けている処
否 否 余は確かに街のはずれで この両の目で見たのです
風が林を揺らす丘の斜面から滑るよふに降りてくる あの星座の下に
天沢オリオンは或るのです
余は何かしら訝しく思ひ 冷たい手摺りに手を置いて 夜の星を見上げた そこでは
蒸気で動く気狂いロボットも 決してこのバルコニーまでは降りて来れそうもない
(と思へる)乳色の河が 天沢オリオンを浮かべて 静かに流れていたのです
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