ダッシュ/捨て彦
 
口を突き出すように大きく開けて固定する
目はぎゅうっっと閉じ
手はもちろんグーだ
それももちろん固定して


たぶん地平線の向こう
まだ水母のような月と
プカプカ浮いている阿呆っぽい雲の
向こうからのまぶしいなにかに備えて
おれは目をぎゅううっっっ


っと閉じるのだ

握られた拳は
あくまで腰から下にある


そのようなもののまったくもって呆れた正体に
顕微鏡を用いて言及しなくていい


力みがたえまなく血潮をめぐらせ
明日からとても寒くなる
おれは昨日忘れられた土地で
まったくもって無害な真っ白い人たちと
挨拶を交わしビールを飲んだ
柿をむしって食べて
要らなかったらそこらに捨てた
また土に帰って木ができる




せいたかが風になびいて
また目を覚ます
明日からとても寒くなる


肌を締め付けるような空気
田んぼの脇で
ぎゅっと立つと血が巡る
足の先まで
拳はあいかわらずまだ
腰から下で黙っているが

どっくんと鼓動


もうすぐ



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