銀ぎつねさんのお店/チアーヌ
いで、自分でお店を開いたのでした。
「素敵なお店ですね。あのピアノは、銀ぎつねさんがお弾きになるんですか?あれ、フルコンですよね」
赤頭巾ちゃんが店の隅においてある大きなピアノを指差して言いました。
「いや、僕は弾きませんよ」
銀ぎつねさんが言いました。
黒頭巾ちゃんは、久しぶりに会った銀ぎつねさんの指を、じっと見つめました。
昔、とても好きだと思った指なのでした。
けれど、もう、それはずいぶん昔のことなのでした。
赤頭巾ちゃんと、銀ぎつねさんのお話が盛り上がり始めた辺りで、トイレに行くふりをして黒頭巾ちゃんはそっと銀ぎつねさんのお店を出ました。
秋口の風は冷たく、黒頭巾ちゃんはちょっと震えながら月を見上げ、ゆっくりと体にショールを巻きました。
こんなに月の明るい晩には、黒い神様は現れないに違いないわ、と思っていたのですが、帰る途中にふらりと立ち寄ったお店に、神様はいたのでした。
黒頭巾ちゃんはお店の隅で、神様とキスをして、二人で手を繋ぎ、そのお店を出ました。
神様、今夜もありがとう。わたしは神様を愛しています。黒頭巾ちゃんはぼんやりとそう思いました。
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