雨鳥の冬/木立 悟
鳥は去り
木が生まれる
切られては元にもどる雲
光の枝
朝の頬
つつむ手のひら
空は青い傷のもの
雨の暗号の向こうへと
ひとつのかたちが飛び去ってゆく
雲間の灰をひらく鍵
青と紫をつなぐもの
鏡の内にたたずむ鳥
風のほうへ 水のほうへ
尾を向ける
風に突かれ
鳥は驚き
やがて慣れて
次々と降り来る
鳥の絵の前にも鳥は来て
見えないはばたきを重ね合わせる
空の上をめぐる空
夜のなか 光が
手のひらだけを照らし
手のひらは川に映り
川は川に映り
雨のなか
鳥と手のひらは結ばれて
夜の水を越えてゆく
空をつくる
数え切れない小さな傷
光は独りの星から来ては
独りの星へと去ってゆく
空の上の空が
傷の上の傷が
遠い一筋の角度から
手のひらに
鳥に
応えつづける
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