青い封筒/服部 剛
駅の改札口から外へ出ると
繰り返し打ち上がる花火が
大輪の花を夜空に咲かせては散っていた
仕事を終えた男は
先週バーで隣り合わせた女と
待ち合わせた場所に向かっていた
日常の仮面の下に隠している
影の素顔で夜の街へと
商店街に並んだ店のシャッターが下りたところに
地べたに座った二人の青年がギターを掻(か)き鳴らし
夜風の運ぶ唄声(うたごえ)は
青春の色で光る矢となり
男の寂しい丸みを帯びた背中に傾いて刺さる
遠い昨日に置いてきた感傷の記憶
花火の散った夜空に懐かしい場面が浮かぶ
(あの弾き語りの青年達のように
(仲間等と夜を明かした
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)