take it easy!/黒田康之
家に帰ろうとすると思った
遠くで僕が降りたのよりも
もっともっとあとの電車が
レールを軋ませて走ってゆこうとする
街灯がひとつ明滅していて
長い桜並木の
もうすでに長く葉桜のままの道を僕は歩く
雨と苔で黒ずんだブロック塀が続いて
舗装しなおしたばかりのアスファルトがきらきらと光っている
するとどこからか
Take it easy. Take it easy Take it easy.
とコオロギの鳴く声がする
Take it easy. Take it easy Take it easy.
と鳴く声は姿を見せず僕の後を追ってくる
でも
残念ながら今日の僕は悲し
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