午後の終わり/木立 悟
曇の蒼から産み落とされる
まるいものたちのなかに月があり
ぬるりと山を流れてゆく
午後の終わりの操車場は
しじゅう何かに追われていて
しじゅう鉄の音をたてている
いっせいにひるがえる葉の裏側に
鴉の羽が見えては隠れ
蝶は硝子を吸いつづけている
虫は鳴き止み 子らは帰る
静けさが伝える
街の背の雨
踏切のむこうから濡れはじめ
音は線を引いてゆく
一息の風が 魚のように道をわたる
空き地を見おろす橋の上
鳥のかたちの光がひとり
通りすぎる滴を見ている
午後の終わりの操車場から
鉄の音は去ってゆく
追うものの姿が現われぬまま
暗がりの目のなかに暗がりはなく
ただ重なりひらく声があり
遠い生きものに応えつづける
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