手向け(骨)/蒸発王
俺はあの女が嫌いだった
あの女も俺が嫌いだった
あの女は俺のダチが愛した奴だった
【手向け】−骨−
ダチが死んだ
唖然とした
初めての喪服は
急すぎて買うヒマも無くて
結局
借りた
皆暗い顔をしていた
式中に
わざと
大声で泣いてやった
皆笑った
霊柩車に棺を運ぶ時
わざと
箱の角に頭をぶつけて
痛がってみた
皆笑った
ダチは
何時も
笑顔のど真ん中にいる男だったから
俺は捨て身で皆を笑わせた
なのに
あの女は笑わない
無表情をはっつけたまま
火葬場
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