太平洋ベルト/なかやまそう
 
雨の音を聴きに
外に出ると

足あとがすべて
雨音で消えてしまうので
暗闇に映る
自分のそんざいを
たしかめたくて

あたりを眺めるけれど
なにひとつ
くっきりと映るモノは
なくてぼくも
ぼやけていた

滲んだ川から流れてくる
眠くならない錠剤は
プチプチと透明な
粒子が走り回る毒
をもった
おおきなくらげとなる

午前0時を過ぎると
産業革命にのり
おくれた理不尽な
町工場で働く
重労働者はおさない
けものを追いかけ
いっせいに
街の方へながれはじめる

囲い込まれた部屋の中で

[次のページ]
戻る   Point(1)