煩う恋/落合朱美
 


涙は
流れることを許されず
瞳にとどまっていた

雨が
かわりに泣いてくれたので
辛うじてプライドを保っている

物語は
最終章を目の前にして
頁を閉じられた

栞を
挿むことを忘れたので
もう二度と読み返せない

唇を噛んで
宙を睨むような恋は
まっぴらだと思うのに

気付けばいつも
おなじ痛みを躰に刻んで
恍惚としている




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