スプートニクの泣いた話/蒸発王
僕はスプートニク2号
地球初
気密室を搭載した
宇宙船
まもなく
僕は
他の兄弟と同じように
宇宙の塵となる
鉄の塊
その日
僕の部屋に来たのは
いつもの白衣の人間と
一匹の犬
『彼女は君のパートナーだよ、宜しくやってくれ。』
人間はそれだけ言って
彼女を中に残したまま
扉を閉めた
彼女は蒼い目をきらめかせて
訊いた
『名前は何というの?』
『僕はスプートニク2号・全長29.2m、尾翼をふくめた直径10.3m、重さ26.7トン』
『すぷうとにく。私は名前を忘れてしまったの』
『何
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