路傍のひと花/恋月 ぴの
手のひらに感じる暖かさがあれば
他には何も要らない
日々思い出を積み上げても
それは単なる一里塚
それは儚い夢幻
振り返れば跡形もなく
積んだ記憶さえ残ってはいない
手のひらに感じる暖かさを頼りに
これからの道をゆっくりと歩き
暖かさの放つ仄かな光りに映える
君の居る気配に浸っていたい
ひとつでも欲しいと思うから
総てを欲しくなる
思い出を積み上げるより歌を歌いたい
たとえ人々に後ろ指差されても
たとえ路傍のひと花に終わろうとも
涸れ果てた僕の涙のかわりに
葉脈を伝う朝露のひと滴
君に捧げる歌を歌おう
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