小詩集「書置き」(六十一〜七十)/たもつ
 


焼き鳥が
香ばしい匂いを振りまきながら
暁の空を行く
カルシウムでできた複雑な骨を失い
たった一本の竹串を骨にすることで
初めて得た飛行を
力の限り大切にしながら
もうコケコッコーも
言わないつもりなのだ

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交番の前では
制服姿の警察官が
三人で話をしている
すぐ近くにあるバケツでは
音も無く
水が蒸発している

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仔犬の眼の中に
なみなみとしている
プールで私が泳いでいると
雨が降っているフェンスの
向こう側
誰かのお墓みたいに
木々が直立していて
いつか仔犬、
あなたの分まで
死んであげたいと思った

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