地形図に隠された地図/殿岡秀秋
たる。これは見たことがない。そこが地図の切れ目なのだと推察がついた。地図の中をさまよっているのだ。元来た道を引きかえすことにした。ぼくは再び地図の外に出られるか心配になってきた。子どものころに鬼ごっこして隠れていたら、いつまでも見つけてくれなくて、暗くなって、みんな家に帰ってしまったときの恐怖がよみがえる。ぼくをひとりにしないで。しかし、地図の中に入ったのは元々ひとりだ。ぼくは明るいエスカレーターにのり、乗りかえて、無事にゼリーの中の柱から抜け出た。そして、地図の外に出て元のように大きくなった。
とても長い時間を地図の中ですごして疲れていた。隠された地図の中にぼくが探さなければならない場所があるような気がしていた。地図の切れ目をつなぎ合わせて、再びこの地形図の中に入る日がくるだろう。
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