海へ至る/木立 悟
 




粒になり粉になり消えてゆく
手に触れる花から消えてゆく
からだへ からだへ
浴びせかけられるように降る花
燃えても燃えても降りやまぬ
消えても消えても降りやまぬ


めざめては海へ向かううた
路地に伝う血の跡を
陶器の空を洗い流せず
滴は滴のまま残り
風を映すはざまへ下りる


滑らかに見える夜をちりばめ
気まぐれに凹凸をつける手に
うたはやわらかくつまずいてゆく
枯野の空に浮き沈む
双つの緑の息つぎに
影はななめの手を差しのべる


海へ至るものたちの
小さなこだまが響いている
重なりやがてふたたび離れ
あらゆるささやきの輪唱の
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