朝のこない団地/たもつ
 

君が積木など買ってくるものだから
僕らは積木遊びをするしかなかった

家をつくって
壊し
城をつくって
壊し
他につくるものなど知らない僕らは
やがて一つ一つを並べ
街をつくり始めた
このあたりに企業の社宅
この区画が分譲住宅地
スーパー、ホームセンター、病院
街はずれには円柱形の給水塔

車が欲しいというので
近くのコンビニを三軒まわり
ミニカーつきのお菓子を見つけて買った
建物に比べると赤いスポーツカーは妙に大きいけど
それでも君は満足そうにメインストリートを走らせている

本当はね、車、白かったの

夜が明けるころ
君は生まれ育った団地の話をし始めた
時々、嬉しそうに
時々、涙声で
僕はただ眠たかった

本当はね、車、白かったのよ
遠くで積木を片付ける音が聞こえる
何で積木なんか買ってきたの?
たずねたような気がする
おそらく答えも聞いた


+


それからもう二度と
僕らが積木遊びをすることはなかった




戻る   Point(23)