朝のこない団地/たもつ
君が積木など買ってくるものだから
僕らは積木遊びをするしかなかった
家をつくって
壊し
城をつくって
壊し
他につくるものなど知らない僕らは
やがて一つ一つを並べ
街をつくり始めた
このあたりに企業の社宅
この区画が分譲住宅地
スーパー、ホームセンター、病院
街はずれには円柱形の給水塔
車が欲しいというので
近くのコンビニを三軒まわり
ミニカーつきのお菓子を見つけて買った
建物に比べると赤いスポーツカーは妙に大きいけど
それでも君は満足そうにメインストリートを走らせている
本当はね、車、白かったの
夜が明けるころ
君は生まれ育った団地の話をし始めた
時々、嬉しそうに
時々、涙声で
僕はただ眠たかった
本当はね、車、白かったのよ
遠くで積木を片付ける音が聞こえる
何で積木なんか買ってきたの?
たずねたような気がする
おそらく答えも聞いた
+
それからもう二度と
僕らが積木遊びをすることはなかった
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