冷たい雨/水無月 綾
 
冷たい雨に身体を打たせた
冷たい雨に身体を委ねた
貴方のように冷たい雨に‥

夏の前の雨の季節
窓から見える暗い空
水たまりに落ちる雨の粒
この水分を
この湿気を
吸い込んで私の心は重くなる
乾かす光もなくて
絞るお風呂場もなくて
だから私は
押し流すため
冷たい雨を身体に浴びせ続ける
貴方がいなくなったから‥

窓を開け放しても
気分が暗く沈んで行くだけ
だからカーテンは閉じたまま
きっと窓のサッシは酷い有様
青く
黒く
変色しているだろう
きっと私も
窓のサッシや
冷蔵庫の古い牛乳と
同じようなものだろう
貴方には逢えない‥

冷たい雨に身体を預けた

冷たい雨は私に
二度と身体を返してくれなかった

冷たい雨と
冷たい貴方
どちらがより冷たいのだろう‥

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