秋釣/
草野大悟
潮の匂いのする河口で
きみが釣り上げた秋は
きらきらと
ヴァーミリオンの鱗を煌めかせ
すっぽりと
きみの心に還っていった
ぼくはといえば
あいかわらず
仕掛けを空に垂らし
風を釣ろうとするのだけれど
いつものように
あたりひとつない現実に
妙に満足している
日焼けした
ふたりの竿の先に
赤トンボが一匹ずつ
停まっている
夕まづめ
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