「街波」【やったよ連詩!やっぱり連詩は楽しいね!】/ベンジャミン
 
満員電車の中で溜息をつく
人の間をすり抜けてゆく生暖かい空気

すみません、おります、という声に
押されてできた小さな隙間
赤いランドセルが送り出される
紙くずが舞うホームに向かって
歩き出した小さな足は
見えない橋をわたるようにぎこちない

到着した電車からあふれた人の波に
飲み込まれそうな不安を背負ったまま
動き出した車窓に置いていかれた
小さな背中の赤いランドセルが
健やかでありますようにと、ふと、祈った

この街は大きすぎるのだろうか

歩きながら、おります、と呟いてみる
小さいものが多すぎるだけなのだと知っているから
かきわけるようにして毎日を過ごし
溺れないために吸い込んだ空気に
少しずつ慣れていく

波間に漂うあの赤いランドセルは
使っていくうちに傷つき汚れていくだろうけど
いつか大人へと泳ぎ着けるだろうか

ここが素晴らしい街だとは言わないけれど

    

{引用=ザラメさん→僕 で、一行連詩です。〆はザラメさん。
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