詩人は傘を忘れる/銀猫
空が灰色クレヨンの日
風邪をひいた詩人はゆめゆめ思った
詩人たるもの
移ろう季節を誰より早く
探して言葉にしなくちゃいけない
詩人たるもの
少しはむつかしい漢字くらい
すらすら書けなくちゃ間が悪い
そうして
憂鬱のうつの字を
き かん き わ は ひ さん
と覚えておく
薔薇とか猥褻なんて字も
知っていて損は無い
若干微熱発熱に
浮かれた詩人はつくづく思った
詩人たるもの
誰より寂しさが得意でなくちゃいけない
片恋の透明が描けない
詩人たるもの
あまりいっぺんに気付きすぎちゃいけない
次のお題がなくなってしまう
詩人たるもの
筋骨隆々しすぎちゃいけない
身体よりこころがいつも少し勝っていなくちゃ
アウトドアライフをエンジョイしてしまう
嗚呼
詩人たるもの
たまには躓いて笑われること
それだってさらり言葉に出来なきゃいけないね
嗚呼 嗚呼
今日の空は何故こんな素晴らしい憂鬱色なのだ!
詩人は傘を忘れやすく
風邪をひいて咳をする
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