小詩集「書置き」(四十一〜五十)/たもつ
 
ぼらしいベンチを描いた
何に乗ることも無く父親と二人で
一日中ベンチに腰掛けていた
遊園地にはそんな思い出しかないのだ
少年は座っている人を描き始めたが
そこには少年と母親の
幸せそうな姿しかなかった

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街は保とうとする私たちの外形
私たちは不規則に
膨張を繰り返すものの軌跡
ほのかな光を発し
自分自身の中を飛行する寂しい
、の電力を運ぶため
送電線は走る
路上に放置されたコンクリートの破片
私たちはその中にさえも
記憶されることは難しい



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