小詩集「書置き」(四十一〜五十)/たもつ
好きなものを頼みなさい
メニューを渡すと
娘はしばらくうつむいて
星が見たいと言う
隣のテーブルにバスがいたので
手を繋ぎ乗る
ひとつ前の停留所で
サーカスを見るために
大半の客は降りた
私たちは終点で降り
小高い丘を登って
いつまでも天体観測を続けた
+
空腹に
ソーセージが詰められていく
そのうちの何本かは
ウィンナーかもしれない
そう考えると
すっかり縮みあがって
夜盗の助走は
失速する
+
距離とは
きっと
何かの理由
会いたいとか
会えないとか
頭突きをするとか
しないとか
+
大工さんたちが私を囲ん
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