*うた*/かおる
 


掌からうたが溢れ
あおいそらに吸い込まれていく
天上人の哀しみの衣を揺すり
流れ星がひとつ零れて散った

足下からうたが生まれ
あおい海原に 滲んで消えた
深海魚の喜びのざわめきに
哀しみ色がふたつ混ざったとして
気づく人がいるのだろうか

唇からうたが紡がれ
緑の大地にひっそりと畳まれる
透過していく躰
雨の花を宿し潜む感情
水の記憶に肩を抱かれ
遥か遠くを憶う

蒼い夏の追憶が風を渡り
満ちていく潮が頭上を翳め
夜の眠りの裾をくすぐる
ほら 紅の色がほころび始めた
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