屋上の巨木/チアーヌ
3階建ての小さなおうちの
屋上にはたくさんの巨木
桜、こぶし、メタセコイア
もうすでに巨木
ねえいつか潰れてしまうよ
そのいつかは今かもしれないよ
中に入れば階段は細く長く
途中にはたくさんの人、人、人
お茶を飲んでは注ぎ飲んでは注ぎ
胃袋は今にも破裂しそう
トイレはいつも満杯
いつ逆流するかな
屋上に上れば巨木が健やかに
風に葉を揺らす
秋空はあくまでも高く
桜の木に鳥が巣を作り
こぶしの根元にはカブトムシの卵が産み付けられ
メタセコイアは30メートルもの高さまで成長し
まだまだこれから
わたしは眩暈がする
後ろから奥さんがにこやかに近づいてくる
変わりない笑顔で
「大丈夫です、それらは全部イミテーションなんです」
「そうなんですか、良く出来ていますね」
「ホームセンターで全部買って来ました、素敵でしょう」
「ホームセンターで」
わたしはもう一度梢を見上げる
巨木は悠久の時間を刻んでいる
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