小詩集「書置き」(三十一〜四十)/たもつ
 


よく晴れた日
ハンガーに吊るして
自分を干してみる
きっと人はこのように
優しく干からびていくのだろう
水分も記憶も失いながら
+

鏡に向かって
笑う
そんな嘘
ばかりついてる

+

目が覚めると
家が巨大なクラゲになっていた
さっきまで寝ていた布団も
すっかり湿っている
クラゲは透明な触手を揺らして
威嚇をする
なるべく刺激しないように
そっと洗面所に行き
蛇口をひねる
タツノオトシゴが沢山出てくる
実は水の中にいるのだと
気づきたくないので
呼吸ばかりしている

+

栞の代わりに挟んだ
刺身がもう腐って
臭いから
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