眠りのシステム/塔野夏子
るらしい
それはともかくとして
注文はいつも月の日数より
やや多めにしておく
だいたい一日一個で適量の眠りがとれるけど
疲れたり体調が悪かったりで
ぐっすり眠りたいときは
二個使うこともあるからだ
極端に注文数が多くないかぎり
当局もべつに文句はいわない
よっぽどストレスがたまったり
あるいは病気などの場合には
当局からの眠りではうまく眠れないこともある
そういうときには睡眠医をおとずれて
症状にあった眠りを調合してもらうのだ
さて眠りは一個ずつ箱づめされている
手のひらに載るほどの小さな紙箱だ
眠ろうと思うとき それを枕元で開ける
中には何も入ってない
でもそれで眠れるのだ
何故なのかは当局の担当者と
睡眠医しか知らない
私たちも別段 知りたいとも思っていない
たぶん知らない方が
よく眠れる そんな気がするのだ
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