小詩集「書置き」(二十一〜三十)/たもつ
 

二人で
もっと大きな
ビルディングを食べよう
明日の話は
それから

+

昨日荷物を
引きずっていた人が
今日は荷物に
引きずられている
その様子を見ながら
母親が子供に
時刻を教えている

+

自分の身体の一部が
埋まっている気がして
深夜
砂場へと出かける
いくら掘っても見つからない
時々何かがあるけれど
身体のどこにも
当てはまらない

+

空は陥落した
その下には
今日も美しい都市が
広がっている
絶えることの無い
笑顔と歌声
確かに
廃墟はあるのだ
人々の皮膚に覆われて

+

色をなくして
列車は走る
既に形を失い
音も名前も失った
それでも車掌が
列車だと言い張るので
運転士は春の土手を
全速力で走る





戻る   Point(18)