小詩集「書置き」(二十一〜三十)/たもつ
 
尖った粘土に
刺さった虫
のように
息だけ
している
息しか
できない

+

明方
キリンの群れが横断歩道を
渡っていく
あれは首長竜の一種だ
と弟に教える
弟は悲しそうな顔をしながら
恐竜図鑑に書き加えていく

+

愛は海よりも
深い
たとえ遠浅でも
海は海だ
愛が愛であるかは
別として

+

たくさんの背中を
見すぎて
父さん、乱視は
進んでいきます
合う眼鏡がなくて
今日も世界は
気持ちが悪いままです

+

弁当箱の
裏についた
米粒のあたりで
宇宙の四百二十三番地が
発見された

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