ひひる  霊野/木立 悟
 




他を照らせぬ光が集まり
枯れ木の夜を編みあげる
ゆらぐ景
降りそそぐ火
ふるえ よろこび
まばゆい鈍
それら 夜の鳥の浮力のすべて
融けるように溶けふたたび潜る



暗がりのなかの泉から
発つもの戻るものの足跡がひろがる
足跡は重なり
水を引きずり
やがて幾筋かの銀の道になる
光を隠す森のうなじも
泉のまわりに立つ幽霊も
金の格子に染められてゆく



黒衣の脇腹に咲く黒薔薇
太陽を蝕(く)う星雲
踊りの神が砕け散る音
星の爆発の色がどこからか来て
生きものを秋に変えてゆく



氷が軋り
雲の切れ端が重なりはじめ
池には何も映らなくなる
水滴と虫の作る波紋が
わずかな水草の影さえも消し
暗い鏡の水辺に棲むものは
ただ ひひるの舞いを繰(く)る






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