ある定食屋で/不老産兄弟
上町の焦げ臭い定食屋の隅に
加藤が座っていた
何十年も前からここに憑いている
かつてはこの辺りにも産業があった
公僕たちがしなやかな課税に遊ばれ野原をかけめぐっていた
雨音を聞いた俺は外に目をやり
給仕に蛇の目を持ってこさせた
かきフライが冷めちまった
新聞の雇用欄を眺めていたのだ
そんなうまい話があるはずもなく
俺はかつての影をただぼんやりと追いかけている
映像として
あまりソースのしみていないのをいくつか口に運び
加藤の分も一緒に清算を済ませた
無表情の給仕から蛇の目を受け取り
あの雨音の中へと消えてしまった
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