都バス/なかやまそう
い
外の空気で
あたまの中の
数字も
大切な書類も
風にのり
僕の記憶から
舞い上がる
走り出したバスは
休日に浮かぶ
夕闇の中へ
僕と未だ見ぬ夢を
乗せて
東京を流れる
ヘッドフォンから
聴こえる
アブストラクトな
音楽と
おおきな窓から
見える
リアルな景色は
本郷3丁目の
急な坂を下ると
逆転して
すれ違う車は
灰色の鉄
休日を歩む
人の存在は
水色の流体
となって
流れこんでくる
やがて
すべての存在は
七つの色に
変化して
不思議な
ヒカリだけが
空間を漂い
拡散し
丸い球体は
橙色に
光ったり
藍色に
滲んだり
するから
思わず
バスを飛び降り
黄色く光る
無垢な愛情に
満ちた
ペットショップで
窓越しのネコに
未だ見ぬ夢を
託してみる
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