小詩集「書置き」(十一〜二十)/たもつ
 

知らない人の
名前だったと思う

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機械を拾いに
広場に行く
思ったより落ちていたのは
機械化が進んいるからだろう
持ち帰り
きれいに一つ一つ磨いて
きれいに庭に埋めていく

+

廊下に長い影
長く伸びすぎて
壁に折れる
蹴ったボール
その向こう
窓からは
雑木林が見える

+

母がブランコをしている
少し離れて
妹が泣いている
母をしまう
妹はブランコに駆け寄り
落ちていた人形を拾って
嬉しそうに笑う

+

いつのころからか
雨のように鳴く虫が
目の中に住み着いてる
涙を餌にしているようで
最近すっかり
涙が零れなくなった
人でなし、と
散々罵られる
雨の音は
きみには聞こえないらしい


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