夜に啼くは…/唯浮
 
月が回って溶けてゆく
オレンジ色の火花を散らして
バッハ『インベンション第13番イ短調』
堕ちて行くのは君の声か私の声か
螺旋階段の果ては無く
「何故手を離したの?」
折り重なる指と指
パラボナアンテナの焦点に
幾重にも幾重にも幾重にも
「ここは暗くて冷たいの…」
か細き声が…
月は回って溶けてゆく
オレンジ色の火花を散らして
夜の焦点はきっと私の胸の中
螺旋階段が閉じ込める

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