ミカンの誇り/ブルース瀬戸内
ミカンが泣いています。
かごに山ほどいた仲間が一つずつ
確実になくなって
心中すら約束した最後の仲間も
突然、消えてしまいました。
失ってから分かることは
あまりにも、あまりにも多すぎます。
かごが載っているコタツを
最前線基地とするおばあちゃんは
最後のミカンはお正月用にとっておくことにして
食べるのを我慢しました。
おばあちゃんは孫に
最近、手の平が妙に黄色いことを指摘されたので
それは年のせいだとごまかしました。
病院へ行こうかしら、ともいいます。
ビタミンCをたっぷり含んだ顔で
そんなことを言います。
最後のミカンはといえば
お正月に向けて
一族の誇りを懸けんとして
思いっきり甘くなっている最中です。
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