宣告/落合朱美
宣告を受けた日
私たちは意外なほど冷静だった
それはおそらく
屈強な父の姿には癌という病名が
あまりにも似つかわしくなかったからで
父はいつもの如く寡黙だったし
私たちは淡々としていて
それはおそらく
驚きや悲しみなんかよりも
入院治療に掛かる費用や
要介護の祖母の世話のことなど
現実として捉えなければならない
問題が多々あったからで
だけどその夜は遅くまで誰も
独りになろうとはしなくて
居間の真ん中にかたまって
いつまでもひそひそと寄り添っていた
第二の宣告は残酷だった
あのほど頑固だった父が
黙って医者に従い手術
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