小詩集「書置き」(一〜十)/たもつ
朝のやかん
なぞって
もう一度寝る
エビの夢を
見ながら
+
階段
すべてが
階段
そんな
建物
+
夕刊の
「帰」という字を
黄色く
塗っていくと
多いのか
少ないのか
よくわからない
+
歯を磨くことが
こんなにも
難しい
会えない人の
名を呼びながら
+
生きている、と
生きている人に
言う
しまらない
とどかない
+
カミツキガメ
に噛みついた
女の伝記
身勝手に生きて
身勝手に逝った
+
昔から部屋の中を
川が流れているのに
どちらが上流か
まだわから
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